認知症や精神上の障害を患う人が増加しています。これらの方々に寄り添い財産の管理、身体の保護を担う成年後見制度の役割が改めて見直されています。この制度について知識を深めたいと思います。この記事は民法の条文を中心に記述しました。( )内の数字は条文の根拠です。
●成年後見制度とは
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者(7)を保護するため、家庭裁判所は審判によって後見を開始します。審判は本人、配偶者、4親等以内の親族等からの請求によって行われますが、後見の開始後、本人が日用品の購入や日常生活に関する行為を除く法律行為は取り消しの対象になります(9)。
●後見人になる人は
後見人いわゆる成年後見人はどんな人が就くのでしょうか。家庭裁判所は職権で選任するとあります(843)。誰でもというわけではなく、選任にあたって条件が規定されています。
①成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況
②成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係
裁判所はこれらを照らし合わせ選任することになります。第三者後見人等と呼ばれる専門職後見人の受任件数の調査があります。それによると司法書士、弁護士、社会福祉士、社会福祉協議会に続いて行政書士の順になっています。
●どんな事務を担うのか
後見人は就任と同時に財産の調査に着手し目録を作成しなければなりません(853)。財産の管理をし被後見人の代表をします(859)。そのほか、生活、療養看護及び財産の管理を行うに当たっては成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態を及び生活の状況に配慮することが求められます(858)。
状況によっては被後見人の居住用不動産を処分することが出てくる場合もあります。被後見人に代わって、売却、賃貸、賃貸借の解除等を行う場合には、裁判所の許可を得なければならなりません(859の3)。
後見人は財産管理のほか身上保護も大事な事務です。
身上配慮義務について有名な最高裁判決があります。
被後見人である認知高齢者がJR駅構内に入り列車と衝突し死亡、これにより列車の遅延による損害が発生し、後見人家族に賠償の請求を求めた事件です。
平成28年3月、成年後見人に対し事実行為として成年被後見人の現実の介護を行うことや成年被後見人の行動を監督することを求めするものではない、と判決しました。
●報酬と後見の終了
後見人の報酬は被後見人の財産の中から与えることができる(862)と規定されています。具体的な金額は分かりませんが財産の額に応じて決めているのでは思います。報酬については全く報酬を受領できていない、又は非常に定額な報酬しか受領できていない案件が増加している(日本行政2022,7)で今後の課題として提起されています。
開始があれば被後見人の死亡等により後見の終了も生じます。任務が終了したとき2か月以内に管理の計算をするとともに(870)、被後見人が死亡したときは相続人が管理するに至るまで相続財産を管理することになっています(873の2)。
後見人には行政書士も公益社団法人コスモス成年後見サポートセンターを組織し活動しています。