2025年には高齢者の5人に1人が認知症になる予測があります。相続に関し身近な三つのケースを考えてみました。
①遺言書の作成
②預貯金の引き出し、解約
③遺産分割協議書への参加
ここで登場するAさんは70代、かかりつけ医から認知症の診断を受けています。
①遺言書の作成は可能か
Aさんは、将来の争いを防ぐため公正証書遺言の作成を考えました。認知症といっても程度、症状は多様です。幸いに日常生活を送れていますので、かかりつけ医はAさんに普段から接してるので、遺言の内容を把握し決めるその効果を理解できると考えています。またAさんは自分の考えを普段からノートなどにまとめています。
この場合であれば作成は可能と考えることができます。
作成時にかかりつけ医の診断書などの添付もしておくと後々のためには有用と思われます。
いずれにしても元気なうちに作成することが大切と思います。
②預金の引き出し、解約はできるか
家族等が代理して銀行の窓口に行って預金の引き出しを行うことは限定的な対応になるようです。
限定的とは、認知判断能力が失う以前に医療費の支払いなど本人が支払っていただであろうたことが確認されるものに限られるようです。
全国銀行協会がまとめた「金融機関における取引の考え方等に関する指針」が参考になります。
指針では、基本的には成年後見制度の利用を求め成年後見人からの依頼が第一とされています。
③遺産分割協議書への参加
Aさんのお父さんが亡くなって、Aさんを含む兄弟3人と母親が相続人となりました。お父さんは遺言書は残しておらず、この場合相続人が集まって話し合いをすることが必要になります。Aさんは認知症を患っていると、この話し合いの場に参加できるのでしょうか。
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。認知症は判断能力が低下したり、意思決定ができない恐れがあります。そうすると、Aさんが参加した遺産分割協議書は無効になる可能性があります。そのため、Aさんには成年後見人をつけて参加するか、意思能力と法律行為の結果が把握できる場合は、医師の立ち会いのもとに、遺産分割協議に参加することができます。