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遺産分割の基準と906条


被相続人がお亡くなりになると、相続関係人は集まって話し合いの段階に進みます。この際、相続人確定の調査や、財産目録の作成などを行う必要があります。その前には被相続人が遺言を残されていないかどうか、という点もポイントとなります。

 

遺言が残されていたり、話し合いの協議が円滑に進めば、その後は遺産分割協議書の作成となります。しかし、相続人同士の話し合いがまとまらないとどうなるでしょうか。民法906条にこのような規定があります。

「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」。

少し長い条文になりましたが、ご理解いただけると思います。

 

年齢とは、必ずしも若い人に手厚くとはならないですし、心身の状態にあっては障害を有する方には考慮されるべき事項なのかもしれません。結局、遺産分割の方針を示していますが、必ずしもこの規定を優先しなさい、とはなっていないようです。相続人がお互い協議して決めった結果が優先され、遺産の具体的配分が定まるものです。法定相続分と異なる遺産分割の協議となっても無効となるものではありませんし、906条の基準に違反した遺産分割の効力もありなのです。相続人全員が話し合いで決めたことが優先されるのです。ただし、この規定はなんの存在がないのかといえば、決してそのようなことはありません。相続人が協議のテーブルにあっては、この規定の意味を十分に考えながら協議の手がかりとなることになります。