下町ロケットなど数々の小説を発表している池井戸潤さんの作品を読みました。相続について考えさせられるストーリーとなっておりますのでまとめてみました。
■あらずじ
かばん屋の社長は亡くなられ、長男亮(銀行員)、次男均(かばん屋専務)の二人が相続人となります。社長は遺言書を残していたとされ、そこには同社全株式を長男へ相続させるという内容でした。商売をやっているので他にも財産はいろいろ有る筈ですがストーリーでは株式のみ。遺言書は長男が偽造した疑いがあり、会社は長男が銀行員を辞め引き継ぐことに、次男は相続を放棄することになりました。
■物語の核心
会社はまもなく倒産の危機。代理店の倒産により売掛金3,000万円の回収不能、連帯保証総額5億円が生じます。亡くなった社長は生前次男に会社を潰せと話相続を放棄するよう進言しました。長男はそういう事実を知らず会社の乗っ取りを計画し実行に移したのですが、まもなく破綻。最終的には別会社を起こした次男が、倒産で身売りになった本社建物を競売で取得するというものです。
■相続からの視点
遺言書は長男が偽造したもので無効なものです。自筆証書遺言は本文、氏名、年月日等は自筆で書くことが条件になっています。小説ですので、そこはエンターメント性から吟味されるものではありません。相続の放棄ということも書かれています。放棄することにより長男に財産がいくことになりますが、もし放棄していないといろいろ面倒な結果になる恐れがあります。
この小説は実際に起きた事件(京都老舗メーカー一澤帆布事件)に基づいて描いたものです。相続というテーマは小説の世界ではよく取り上げられていますが、争いのない円満な相続としたいものです。