高齢化社会の進展で長寿が進みそれ自体は喜ばしいですが、一方で認知症を患う人は2025年に5人に1人と言われています。
遺言書を作成しようとする人が認知症の疑いがあると遺言能力という問題に直面します。
朝日新聞10月13日付「私の視点」というコラムで弁護士の方が「公正証書の現場から 遺言作成に認知症検査を」と題し投稿されています。実務に当たっている最前線の方の意見として興味をもって読みました。要点は次のとおりです。
・検査を義務付け、不正な公正証書遺言が作られるのを防ぐ
・理解力が欠けてきた父や母を、特定の相続人(多くは子供のうちの1人)が意のままに操り、本人の意図せぬ内容の遺言書が作成されるという例
民法973条は成年被後見人の遺言は医師2人以上の立ち会いがなければならない、と規定しています。また、実務ではあらかじめ成年被後見人ではなくとも、医師の診断書を添付する方もおられるようです。
写真は「認知症のことがわかった」(長谷川和夫著)著者が考案された認知症の検査「長谷川スケール」です。9項目の質問に答えていくものです。どなたでも短時間のうちに判定を知ることができます。今は認知症検査の診断ツールは容易に試すことができますので、心配のある方は事前に挑戦してみるのもいいのかも知れません。
公正証書遺言は、公証役場に行って、公証人の面前で作成するものです。作成する場合に、紛争の予防手段として、あるいは間違いのない方法として、この種の簡易検査を導入されることも一考かもしれません。ちなみに運転免許証の更新の場合、75歳以上は認知症の検査が必須となりました。