昨日の義務研修会では、業際問題について相当の時間を割いて講義をしていただきました。幾つかの裁判例を説明されたのですが、その中で家系図裁判と行政書士業務についてもお話があったので紹介します。
平成22年最高裁判決です。この判決はマスコミでも報道されていましたので記憶にあります。当時は家系図ブームだったのでしょうか。業者さんが新聞広告に行政書士が作成するものとして宣伝されていたように思います。
事件の概要は、次のようになっています。
①資格を有しない被告人が依頼者から家系図作成業務を受託
②行政書士から購入した職務上請求書を使用して戸籍謄本等を取得
③家系図を作成し納品
④市役所から書士会へ通報、書士会から警察に告発、逮捕起訴
最高裁判所は、「本件家系図は、個人の鑑賞ないしは記念のための品として作成されたと認められる」として被告人に無罪を言い渡しました。
結論としては「観賞用・記念用」として作成する家系図は、行政書士法の「事実証明文書」に当たらないとしたものです。
この判決は社会一般的に妥当な判断を示したものと思います。事実証明文書は対外的に個人の権利義務関係に影響を及ぼしうるものといえるものだからです。ルーツを探るという観点からも家系図は有用なものですが、それは個人の観賞用レベルにとどまるものとして考えるべきものと思います。